『二十四節気』『五節句』を捕足して、季節の移ろいをより適確に把握し、伝えるために用いられた。
「節分」「彼岸」「社日(しゃにち)」「八十八夜」「入梅」「半夏生(はんげしょう)」「土用」「二百十日」「二百二十日」の九つ。
〈「初午(はつうま)」「中元」「盂蘭盆(うらぼん)」「大祓(おおはらえ)」を入れる場合もある〉
雑節の中には、「土用」や「社日」のように中国に起源をもつものと、「八十八夜」「二百十日」のように日本独自のものとがあるが、いずれも農業や日常生活の目安として暦に定着している。
※参考
以下に、これから秋にかけての「雑節」を取り上げてみます。
◆八十八夜
立春から数えて八十八日目のことで、新暦の五月二日頃にあたり、三日後に「立夏」となる。「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の毒霜」という言い伝えが残されているように、遅霜の時期でもあり、農事上の重要な節目と考えられ、茶摘み・苗代の籾蒔きなどの目安とされてきた。
1,656年の伊勢暦には既に八十八夜の記載があり、その後、渋川春海によって官暦(貞享暦)に正式な雑節として取り入れられた。
◆入梅
「つゆいり」「ついり」ともいい、梅雨の季節に入る一定の目安となる日をいう。現在の暦法では、太陽が黄経80度を通過した日を「入梅」としており、新暦六月十一日頃にあたる。これはあくまでも暦の上でのことで、気象庁が出す「梅雨入り宣言」とは直接の関係はなく、実際にこの日から梅雨が始まるとは限らない。
旧暦では、「梅雨入り」を二十四節気の五月節・芒種(ぼうしゅ)の後の最初の壬(みずのえ)の日とし、「梅雨明け」を小暑の後の最初の壬の日とする(『本草綱目』)としていたが、異説もある。
「入梅」の語源は、梅の実が熟する頃に雨季に入るところからきている。
◆半夏生
七十二候でいうと、夏至の末候「半夏生(はんげしょうず)」の初日にあたり、雑節の一つにも数えられるようになった。太陽が黄経100度を通過した日で、夏至から11日目、新暦の七月二日頃になる。梅雨の終期にもあたり、農家では、遅くともこの日までには田植えを済ませる目安の日とされた。
「半夏半作」といって、この日以後に田植えをしても収穫が少ないという意味の諺もある。その他、畑の作物の播種期の終わりとする地方も多く、この日に畑に入るのを禁じたりする慎みの日でもあった。
「半夏」とは、もともとは仏教用語で、90日に渡る僧侶たちの夏行である夏安居(げあんご)の中間、45日目の呼称であったのが、この時期に畑地に生える「からすびしゃく」という薬草の別称としても用いられるようになった。つまり「半夏生」とは、半夏が生える時期ということになる。
◆土用
中国暦は「陰陽五行説」によって成り立っており、四季にも五行が配当されている。春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」となり、「土」は各季節に入る前の「土用」に配当された。つまり、365日を五等分すると73日ずつとなり、73を4で割ると18日強となる。これを四季のそれぞれの終わりに配当して「土用」としたのである。
土用の字義は、「土旺用事」「土王用事」といって、「土の気が旺になり事を用いる」意からきている。つまり、用は「はたらき」ということで、土気には、元来、物を変化させる作用があるとされ、その土気が最も働く期間が土用ということになるので、春夏秋冬の四季をも推移させると考えられた。
現在では、夏の土用(新暦七月二十日頃から立秋の前日・八月七日頃までの18日間)が一般的に「土用」として知られている。この期間を「暑中」と呼んで、暑中見舞いを出す習慣や、食養生の習わしから、「土用鰻(うなぎ)」「土用餅」「土用蜆(しじみ)」「土用卵」が食された。
土用の期間中は、陰陽道で土を司(つかさど)るとされている土公神(どこうじん)が支配を強めているので、土を動かすことを忌むべきとされている。但し、四日に一回の割合で「間日」が設けられており、この日には、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)の計らいで、土公神すべてが清涼山(せいりょうざん)に集められるので、土を動かしても祟りがないとされている。
●〔土用の間日〕
春の土用・・・巳・午・酉の日
夏の土用・・・卯・辰・申の日
秋の土用・・・未・酉・亥の日
冬の土用・・・寅・卯・巳の日
◆二百十日
立春から数えて二百十日目の日で、新暦の九月一日頃にあたる。稲の開花期に当たり、台風の襲来を警戒すべき厄日とされている 。二百十日が暦に初めて記載されたのは明暦二年(1,656)の伊勢暦からで、官暦に記載されるようになったのは渋川春海が編纂した貞享暦(1,684)からである。
この時期には全国各地で、「風祭り」「風日待ち」「風祈祷」「風鎮め」といった神事が執り行われる。『越中おわら節』で有名な富山県八尾町の「風の盆」も風祭りの一種である。
◆二百二十日
立春から数えて二百二十日目の日で、新暦の九月十一日頃にあたる。二百十日同様、台風の襲来を警戒すべき荒れ日とされ、「風祭り」等が行なわれる。統計的には、二百十日よりむしろ二百二十日の方を警戒するべきともされている。
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